フリーランスが業務委託契約書で注意すべき内容
Business 2020.6.22
この記事では、フリーランスのデザイナーやエンジニアが、クライアントと業務委託契約を結ぶ際に、契約書で特に注意して確認すべき内容をご紹介いたします。
独立したばかりのフリーランスの方や、これまで契約書の内容をあまり気にしていなかった方に、少しでも参考になれば幸いです。
業務委託契約とは
フリーランスが仕事を受注したとき、クライアントと締結する契約の多くは「業務委託契約」です。
この場合の「業務委託契約」は、民法で規定されている「請負契約」、もしくは「準委任契約」のどちらかを選び締結することとなります。
それではまず、「請負契約」と「準委任契約」の違いについて確認していきましょう。
請負契約について
「請負契約」とは、簡単にいうと仕事を完成させることを約束する
契約です。
受注者(フリーランス)は、仕事を完成させたことによって生まれた成果物を、きちんと発注者に納品し、そこではじめて報酬を受け取ることができます。
この「請負契約」締結の際に、受注者(フリーランス)が特に注意すべき点は以下の3点になります。
1. 契約不適合責任
受注者(フリーランス)に対し「契約不適合責任」が民法で定められています。
「契約不適合責任」とは、発注者が成果物の不適合(バグなどの不具合)を認知してから1年以内であった場合、受注者(フリーランス)は以下いずれかの方法で、この不適合を解決する責任が義務つけられている、というものです。
1. 修補
2. 損害賠償の支払い
3. 契約解除(契約をなかったことにする)
4. 代金減額
そのため、受注者(フリーランス)は締結予定の業務委託契約書内で「契約不適合責任」の発生する条件や、その範囲が具体的にどのように明記されているかを十分に注意して確認する必要があります。
2. 契約の中途解約について
請負契約では、仕事を完成させる前であれば発注者は契約を解約することが可能という点です。
もちろん、受注者(フリーランス)の故意や過失が原因ではない一方的な解約の場合は、発注者は受注者(フリーランス)に対してその損害を賠償するか、履行部分の報酬を支払う必要があることが民法に定められています。
ですが、「中途解約における割合的な報酬請求権」について、契約書内でどのように規定しているかを十分注意して確認しましょう。
必要であれば受注者(フリーランス)は、損害の対象範囲や損害額の算定方法について、業務委託契約書内で決めておくことも検討してください。
3. 印紙税について
最後に注意が必要な点は「印紙税」についてです。
請負契約での業務委託契約書では、以下の通り契約金額によって印紙税が課されます。
1万円未満 非課税
1万円以上100万円以下 200円
100万円を超え200万円以下 400円
200万円を超え300万円以下 1千円
300万円を超え500万円以下 2千円
500万円を超え1千万円以下 1万円
1千万円を超え5千万円以下 2万円
5千万円を超え1億円以下 6万円
1億円を超え5億円以下 10万円
5億円を超え10億円以下 20万円
10億円を超え50億円以下 40万円
50億円を超えるもの 60万円
※契約金額の記載のないもの 200円
詳しくは、国税庁のホームページをご参照ください。
なお、印紙税は課税文書の「作成」に対して課税されるものですので、クラウドサイン等の電子契約の場合は印紙貼付けの必要はありません。
準委任契約について
もうひとつの契約形態として「準委任契約」があります。
「準委任契約」とは、業務の遂行(労働力の提供)の対価として
報酬を受け取ることができる契約になります。
例えば事務作業の代理入力や、IT業界では「SES契約」と呼ばれるものがこの「準委任契約」という契約形態になります。
「準委任契約」では、民法によって、受注者に対して「善管注意義務」(委託された業務に応じて、通常期待される程度の注意を払うことの義務)が定められています。
加えて、「履行割合型」
と「成果完成型」
という2つの形態が定められており、それぞれ適用されるルールが異なります。
受注者は締結予定の契約書が「履行割合型」もしくは「成果完成型」どちらの形態になるのかを注意して確認する必要があります。
それでは、「履行割合型」「成果完成型」それぞれの違いを見ていきましょう。
履行割合型
履行割合型は、一定の「労務」に対して
報酬を受け取ることができる契約形態です。
例えば、会計業務やその入力業務、ソフトウェアの保守業務などが挙げられます。
特筆すべき点としては、受注者は業務の履行が不能となった場合や、何かしらの理由で契約が途中で終了した場合であっても、責任の有無にかかわらず「履行の割合」に応じた報酬を請求できることが民法で規定されています。
また、発注者の帰責性に起因する解約によって委任事務が履行不能となった場合には、報酬全額を請求することが可能となります。
成果完成型
成果完成型は、「成果」に対して報酬を受け取ることができる
契約形態です。
例えば、委託されたコンサルタント業務の成果として、一定の成功を獲得できた場合に報酬を受け取ることができる、といったものがこのケースがこれにあたります。
一見すると先にご紹介した「請負契約」に似ていますが、この「成果報酬型準委任契約」では完成義務がありません。
あくまで「善管注意義務」の範囲内で、業務を遂行すれば良いという点が「請負契約」との大きな違いになります。
また、この「成果報酬型準委任契約」では、受注者が「成果」の完成が不能となった場合や、何かしらの理由で契約解除になった場合であっても、委任者が受ける「利益の割当」に応じた報酬を請求できると民法で規定されています。
そして発注者の帰責性に起因する解約によって委任事務が履行不能となった場合には、報酬全額を請求することが可能となります。
印紙税について
準委任契約の業務委託契約書では、「売買の委託」または「著作権などの無体財産権の譲渡が発生する業務の委託」以外、原則的に印紙を貼り付ける必要はありません。
こちらも詳しくは、国税庁のホームページをご参照ください。
まとめ
以上、フリーランスが業務委託契約締結の際に注意するべき事項を、「請負契約」「準委任契約」2つの契約形態で確認していきました。
業務委託契約書は「報酬の支払い条件」や「契約不適合責任の条件またはその範囲」など、民法の規定とは異なる条件で契約書作成し締結することも可能です。
まずは、締結予定の業務委託契約書が「請負契約」か「準委任契約」か確認し、双方納得する条件で契約できるよう、注意すべき項目をしっかりと確認していきましょう。
この記事が参考になり、皆様のご契約が少しでも円満で生産性のあるものになれば幸いです。